【乗車記】リゾートしらかみで新青森→秋田|日本海絶景と車内体験を徹底レビュー

体験型観光列車

自分だけの「絶景レストラン」を開店!

「レストラン列車」と聞くと、豪華なコース料理や専属シェフを思い浮かべるかもしれません。しかし、今回ご紹介する「リゾートしらかみ」には、キッチンも車内販売もありません。しかし、ここには他のどの列車にも負けない『最高のごちそう』があります。

「世界一の車窓というスパイス」と、「自分がプロデューサーとなって選ぶ地元の味」

新青森から秋田まで、数時間かけてゆっくりと移ろう絶景を肴に、自分だけのフルコースを組み立てる。そんな、自由で贅沢なセルフ・レストランの旅へご案内します。

乗車前準備:新青森駅「青森旬彩館」は最強のパントリー

リゾートしらかみの旅は、乗車前の「仕込み」で決まります。車内販売がないからこそ、新青森駅の「青森旬彩館」を巨大なパントリー(食材庫)に見立てて、最高の食材を揃えましょう。

まずは「下見」の一周を

いきなりレジに並ぶのは禁物。まずは店内を一周して、その日のラインナップを確認します。お弁当の残り数や、地酒の入荷状況をチェックし、頭の中で「本日の献立」を組み立てる時間が最高にワクワクします。

名店「シュトラウス」のアップルパイ

青森を代表するウィーン菓子の名店。駅でも切らさないよう準備されていますが、狙うは「焼きたて」。温もりが残るうちに車内でいただくのが贅沢です。

駅弁コンテスト入賞「青森のぜいたく弁当」

JR東日本の駅弁ランキング企画「味の陣」で受賞歴があり、内容の信頼性で選びました。見た目も華やかで、観光列車との相性が良いです。

温度管理も抜かりなく

奥入瀬ビールや生シードルを最後まで冷たく楽しむため、お店の方に保冷バッグや保冷材をお願いしましょう。

「田酒」との出会いは一期一会

たまたま入荷するタイミングがあれば、迷わず確保!ただし、車内にはカップがないため、その場で飲むなら「マイコップ」の持参が必須。今回は撮り忘れるほど景色に夢中になり、お土産にしました…

予約と編成:特等席を確保するための「レストラン・ガイド」

最高の食事には、最高のテーブルが必要です。リゾートしらかみというレストランを予約する際のポイントをまとめます。

3つの異なる「インテリア」


今回乗車したのは、深い青が美しい「青池」編成。他にも、木材を多用した温かみのある「橅(ぶな)」、夕陽をイメージした「くまげら」があり、それぞれ内装や雰囲気が異なります。展望スペースや、グループ向けのボックス席など、車内設備も充実しています。

設備面では違いもあります。「くまげら」以外の編成には無人の販売コーナーが設置されており、ソフトドリンクやお菓子、リゾートしらかみのオリジナルグッズを購入可能です。軽く買い足したい場面では便利なポイントです。

絶対「海側A席」を指名買い

リゾートしらかみに乗るなら、座席は海側のA席を最優先で確保するべきです。五能線は日本海に沿って走る区間が長く、進行方向に対して海側に座ることで、移動中ずっと絶景の車窓を楽しめます。
そのため、A席が確保できない場合は、日程変更を検討する価値があります。

ボックス席については、グループ利用であればテーブルを囲んで楽しめるメリットがありますが、相席になる可能性と、リクライニングができない点に注意。

予約は1ヶ月前から

人気のA席は争奪戦。JRの指定席券は乗車1ヶ月前の午前10時から発売されます。レストランの予約を入れるつもりで、早めの確保を。

先頭車両と最後尾には自由に使える展望スペースもありますが、滞在できる時間は限られます。

🎫 予約・発券の重要Tips:スムーズな「入店」のために

リゾートしらかみは全席指定です。予約システム「えきねっと」等を利用する際の、レストラン列車ファンなら知っておきたい注意点です。

1. 途中下車するなら「紙の切符」が圧倒的に便利

最近はチケットレス化が進んでいますが、五能線の旅では「紙の切符」での発券を強くおすすめします。

  • 理由:五能線の多くの駅(千畳敷や深浦など)は、交通系ICカードやチケットレス乗車に対応していません。途中下車して街を歩いたり、宿泊したりする場合、紙の切符を持っていないと精算に手間取ることがあります。
  • 安心感:スマートフォンの電波が不安定な海沿いの区間でも、紙の切符なら安心です。

2. 「えきねっと」予約時の注意点

  • シートマップを活用:えきねっとのシートマップ画面から、「A席(海側)」を確実に指名しましょう。
  • 途中下車の特権:乗車券のルール(営業キロ101km以上など)を満たしていれば、紙の切符なら有効期間内であれば何度でも途中下車が可能です。
    • 例:新青森→秋田の乗車券を持っていれば、深浦で一晩泊まって翌日また続きから乗ることもできます(指定席券は区間ごとに必要です)。

3. 発券は「乗車前」に済ませる

  • 新青森駅の券売機で:乗車直前は混み合うこともあります。仕入れ(買い出し)の時間も考慮して、少し早めに駅に到着し、指定席券売機で「紙の切符」を手にしましょう。

食事:視覚と味覚がシンクロする「逆転のフルコース」

いよいよ、新青森駅で仕込んだ食材を「実食」する時間です。車窓の移ろいに合わせて、私流のコースを展開しました。

【前菜】リンゴの花と「シュトラウス」の温もり


最初の「一皿」は、デザートから。車窓に広がる可憐なリンゴの白い花を眺めながら、まだ温かいシュトラウスのアップルパイを。弘前生シードルの泡が、パイの甘酸っぱさを引き立てる地産地消のペアリング。

【メイン】日本海の青に、駅弁とクラフトビールを


景色が日本海へと切り替わったところで、メインの「青森のぜいたく弁当」を開封。砕ける白波を見下ろしながら、コクのある奥入瀬ビールを流し込む。この野性味あふれる体験こそ、五能線の醍醐味です。

【教訓】田酒とカメラの「美味しい」関係

たまたま手に入った銘酒「田酒」。しかし、あまりの絶景にカメラを向けるのに必死で、お酒の写真は撮り忘れてしまいました(笑)。車内にはカップがないため、マイコップの持参をお忘れなく!

車窓全記録:五能線という名の「動く壁画」を味わう

五能線の車窓は、一皿ずつ運ばれてくるフルコースのように、5時間かけてその表情を劇的に変えていきます。私が目撃した、忘れがたい4つの「景色のごちそう」を綴ります。

【白の旋律】岩木山とリンゴの花が紡ぐプロローグ

新青森を出発してすぐ、テーブルの上に広がるのは「白」の世界です。
車窓左側に凛とそびえるのは、まだ深い雪を頂いた岩木山。そして足元には、ちょうど満開を迎えたリンゴの白い花

「雪の白」と「花の白」。この繊細なコントラストを肴に、シュトラウスのアップルパイを一口。リンゴのふるさとを駆け抜けながら、その実を味わう。これ以上ない贅沢なアペリティフ(前菜)から、物語は始まります。

【蒼の深淵】深浦の集落を見下ろす「絶景の俯瞰」

列車が日本海へと差し掛かり、もっとも胸を打たれたのが深浦付近の風景です。
線路が海沿いの高い位置を走るため、坂道に寄り添う小さな集落を眼下に見下ろすことができます。

真っ青な日本海を背景に、瓦屋根が並ぶノスタルジックな風景。それは、どこか遠い記憶を呼び起こすような、静かで深い「蒼」のひととき。ここではお弁当の手を止め、ただただその旅情を噛み締めました。

【躍動の白】千畳敷、15分間の「ライブ・パフォーマンス」

五能線のハイライト、千畳敷駅での一時下車。
ガラス越しに見ていた日本海が、一瞬にして「生」の表情に変わります。足元に広がる広大な岩棚、耳を打つ波の音、そして鼻をくすぐる潮の香り。

かつて殿様が宴を開いたというこの場所で、15分間、五感すべてで自然のエネルギーを吸収する。これは、食事の間の最高に贅沢な「お口直し」でした。

【黄金の終幕】日本海の移ろいと、八郎潟の夕日

太陽が高度を下げるにつれ、海面は銀色からオレンジ色へ。太陽が真正面に迫り、車内のすべてがキラキラと輝き始める時間は、どの高級レストランの照明演出よりもドラマチックです。

そしてフィナーレは、八郎潟に沈む夕日
水鏡となった水面が空の黄金色を映し出し、世界が溶け合っていくような錯覚に陥ります。白から始まり、金で終わる。5時間のフルコースを完食したあとのような、圧倒的な充足感がそこにありました。


停車駅とグルメの進化:途中下車も「フルコース」の一部

リゾートしらかみの車内は、単なる移動空間ではなく、津軽の文化が次々と運ばれてくる「生きた劇場」です。

畳敷海岸での下車体験

潮風を浴び、波の音を間近に聴く時間は、食事の間の最高の「お口直し」です。

東能代駅のバスケ体験

バスケの街ならではのフリースロー体験など、体を動かすアトラクションも(※号車・列車により実施)。

津軽三味線の生演奏と、心に染みる「語り」

車内に響き渡る力強い三味線の音色。それだけでも贅沢ですが、私の乗車回では津軽弁による昔話の語りも披露されました。独特の柔らかなイントネーションで語られる物語は、車窓の風景と重なり合い、まるでタイムスリップしたかのような感覚に包まれます。

五能線全線開通90周年の特別な彩り

今年は五能線にとって記念すべき年。90周年を祝して、従来とは一味違うプログラムも用意されています。

ねぶた囃子の実演:青森の魂とも言える「ねぶた」の熱気が車内に!
ジオパークガイドによる沿線解説:ただ景色を見るだけでなく、その地形がどう作られたのか、土地の成り立ちを深く知ることで、車窓という「一皿」の味わいがいっそう深まります。

🍽️ スマートに味わう「車内の食」:2つの入手ルートを使い分ける

「リゾートしらかみ」には車内販売がないからこそ、2つの「受け取りシステム」を理解しておくことが重要です。

【事前予約】五能線モバイルオーダー「ごのたび(うけとりっぷ)」

確実に食べたい地元の名店メニューは、乗車前にスマホで「予約」しておくのが鉄則です。

  • 特徴: 事前決済・事前予約制。駅のホームで、温かい状態で受け取れます。
  • 体験談:
    • 深浦のビーフシチュー: 以前利用した際、驚いたのはその「温度」。レストランで食べるのと変わらない熱々の状態で受け取ることができ、車内が一気に本格ダイニングに変わりました。
    • 能代の「志んこ」と白神珈琲: 上品なあんの甘みが特徴の「志んこ」は、白神エリアの深いコクがあるコーヒーと相性抜群。静かに移ろう車窓を眺めながらのティータイムに最適です。
  • 注意点: 「当日注文は不可」。数日前までの予約が必要なため、旅の計画段階で「お品書き」を決めておく必要があります。

【当日購入】ふれあい販売

予約をしていなくても、地元の温かさに触れながら購入できるチャンスがあります。

  • 特徴: 地元の方々が、特定の駅から乗り込んで車内で行う対面販売です。
  • 体験談:
    • その日によって、何が販売されるかはお楽しみ。
    • 地元の方との何気ない会話も、旅の隠し味になります。
  • 注意点: 毎日必ず実施されるわけではなく、「出会えたらラッキー」な一期一会のサービスです。見かけたら迷わず手に取るのがおすすめ。

🚩 メリット・デメリット:納得のいく旅にするために

リゾートしらかみは、万人に手放しでおすすめできる列車ではありません。だからこそ、その特性を知っておくことが「最高のディナー(乗車)」への第一歩です。

🟢 メリット:圧倒的な「価格以上の満足度」

  • 追加料金の安さ
    指定席券(840円)を追加するだけで、この豪華な車両と絶景を楽しめるのは驚異的。他の「レストラン列車」なら数万円かかることもありますが、リゾートしらかみは「リーズナブルに贅沢」を叶える最高峰の列車です。
  • 自由な食のカスタマイズ
    決められた献立ではなく、自分が一番食べたいタイミングで、自分流の組み合わせ(アップルパイから始めるなど)を楽しめる自由度は、何物にも代えがたい魅力です。

🔴 デメリット:天候と「準備」という高いハードル

  • 天候に左右される満足度
    「景色こそが最大のごちそう」であるため、雨や霧の日は魅力が半減してしまいます。こればかりは「運」という名の調味料次第です。
  • 「仕込み」の手間が必須
    車内販売が限られているため、事前に駅でお弁当や飲み物を揃える手間がかかります。人によっては「何を買えばいいか迷う」「荷物になる」と感じる、不便なポイントかもしれません。
  • 予約の争奪戦
    人気のA席(海側)は1ヶ月前の発売直後に埋まることも多く、計画段階での気合が必要です。

💡 「手間」を贅沢に変える選択肢:ツアー利用のすすめ

「自分で準備するのは不安」「席の確保が面倒」という方には、パッケージツアーの利用も一つの正解です。

  • メリット:指定席の確保はもちろん、セットプランによっては「駅弁」や「周辺観光」が最初から組み込まれているため、手ぶらで「レストラン」へ向かう感覚で旅を楽しめます。

🌙 記事の締めくくり:秋田駅、夜の余韻と美食のフィナーレ

終着駅の静寂:リゾートしらかみとの別れ

5時間の長い宴を終え、秋田駅のホームへ。駅名標とともに写真に収めたのは、車内の明かりが消えたリゾートしらかみ。主役たちが去った後の静かな車体は、今日一日の素晴らしい景色をすべて飲み込んだような、深い充足感に満ちていました。

秋田の夜を彩る「郷土料理と旨い酒かまくら」

この日の宿は、駅直結で移動も楽なホテルメトロポリタン秋田
夕食に選んだのは、地元の味を存分に楽しめる郷土料理と旨い酒かまくらです。
車内で味わった『青森の旬』に続き、夜は秋田の『旨い酒と郷土の味』。新幹線や特急ではなく、あえて5時間かけて辿り着いたからこそ、その土地の味がより一層深く体に染み渡ります。

【番外編】「あきたくらす」でのほろ苦いリベンジ誓い

秋田駅ビルの立ち飲みスポット『あきたくらす』。お目当ては、今や入手困難な秋田の銘酒『新政』の立ち飲み目当てでしたが、残念ながらこの日は売り切れ……。
人気の高さに圧倒されつつも、『次はもっと早い時間にリベンジしよう』と心に誓う。そんな『次への宿題』もまた、旅を彩る良い思い出です。

🏁 まとめ:リゾートしらかみという「贅沢な不自由」を愉しむ

5時間という、新幹線なら東京から博多まで行けてしまう時間をかけて、あえて青森から秋田へ。

効率や利便性だけを考えれば、車内販売もなく、自分で準備が必要なこの列車は「不自由」かもしれません。しかし、その不自由さこそが、この旅を最高のレストランに変えるスパイスでした。

  • 自分だけの献立: リンゴの花に合わせてパイを食べる贅沢。
  • 五感のフルコース: 三味線の音、語り部の声、そして移ろう光の色。
  • 旅の余韻: 秋田の夜にまで続く、郷土料理と旨い酒の物語。

便利すぎる世の中で、わざわざ手間をかけ、時間をかけて「旬」を追いかける。リゾートしらかみは、そんな大人にこそ許された、究極の食卓なのです。

『5時間は少し長いかな?』と感じる方には、途中下車というスパイスを効かせるのがおすすめ。一気に駆け抜けるフルコースも良いですが、気に入った街で一晩過ごし、翌日にまた別の表情の五能線を味わう。そんな『スローな食旅』も、リゾートしらかみなら自由自在です。

メニューを決めるのは自分、演出を決めるのは太陽。そして、どこまで行くかを決めるのも、あなた次第。五能線という名の皿の上に、今日はどんな物語を並べますか?

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